【小説感想】『仮想人生』ツイッター歴9年のツイッター廃人が読んでみた。

ツイ廃の仮想人生感想 小説感想

こんにちは、峰晃です。

 

みなさんはTwitterアカウントをいくつ持っているでしょうか?

 

この質問自体に疑問を持たれる方が大多数かと思いますが、自分は主に使っているアカウントだけで6つ持っています。

 

まあこれはわりと(少なくともこの『仮想人生』で想定されている読者層には)特殊な事例ですが、こんな風に「裏アカウント」と呼ばれる、普段の自分とは違う振る舞いをするアカウントを作ることは決して珍しいことではありません。

 

『仮想人生』は、そんなTwitterにおける「裏アカウント」を題材にした作品です。

 

 

あらすじ

現実世界で「普通の人」でいるために裏での息抜きが必要なんだ。

ユカの夫・恭平は、人材派遣会社を経営しており、いつも帰りが遅い。

一人で過ごす夜に耐えきれず作った、ツイッターの裏アカウント「人妻の美香」。そこから覗く世界には、表では聞けない欲望と愚痴がうずまいていた。

ネットでナンパを繰り返す「圭太 23歳」。

ツイッターにアップした絵が突然注目を浴びる大学生「ナオ 20歳」。

情緒的な恋愛ツイートが人気の「暇な医大生 21歳」。

童貞食いを繰り返す「ねね 42歳」。

彼らがツイッターの中で少しずつ交わるとき、表の世界では恭平が姿を消す--。

失敗も、成功も、人生はふとした出来事で変わる。

--書籍帯裏より

 

読了した身として断っておくと、これは「恋愛小説」です。

 

それぞれの人がそれぞれの悩みを抱え、変わってしまった、あるいは少しだけ変わった人生を生きていくお話。

 

身も蓋もなく言ってしまえば、恋愛以上のものがない、あってもさらりと流れる程度です。

 

インターネットの裏アカウントですれ違う人々の小説、と聞いて自分はゲームの『街』とか、『.hack』のような関係性を期待していたのですが、そんな感じではありませんでした。

 

「裏アカウント」について

 

さて、そもそも「裏アカウント」の定義は何でしょう?

 

自分は『仮想人生』を読むまで、

 

鍵をかけている(非公開状態になっている)アカウントで、誰もいない、あるいはごく限られた少数のフォロワーしかおらず、愚痴やリアル事情、あるいはR-18のような表立って言えないツイートをするアカウント

 

のことだと思っていましたし、実際、自分のタイムラインやフォロワーさんの間ではそれが主流です。が。

 

『仮想人生』においてはそれが非常に曖昧です。

 

ユカは他にアカウントが(一応)あり、別人として登録したもの。

鉄平はネットナンパ専用アカウント。

直人は他にアカウントがあるのかわからないが、主にエロコンテンツを見たいが為に作ったもの。

裕二は自己承認欲求を満たしたいがためのパクリツイッタラー。

愛は精神安定のためのいっときのセフレ探し。

 

何をもって作者が「裏アカウント」と称しているのかイマイチわかりません。

 

ちなみに裕二(暇な医大生)がしているツイートのパクリは著作権的にグレーゾーンです。

Twitterはツイートを共有すること(引用RT、サイトへの引用等)は規約で自由とされていますが、ツイートそのものの著作権をフリーにするわけじゃないので。

 

正直な感想

 

裏=エロという発想しかないのか?

 

というのが読了直後の正直な感想です。

 

人間てもっと闇が深くて、悩みも多岐に渡り、その解消方法も様々のはずです。もちろん、そのうえで「裏アカウント」というものの使い道も。

 

登場人物の半分以上がそれぞれの悩みの解消策・発散方法としてセックスを選んでいることに安直さを感じてしまいました。

 

帯に「ネットを知り尽くす者にしか描けない」という煽りがあったので、ネットを会したもっと多様な人間模様を期待していたのですが、自分でハードルを上げすぎていたようです。

 

自分のメインのツイッターアカウントを登録した日を見てみたら、2010年でした。最近はとんと減ってしまいましたが、すごい時には1日300ツイートとか平気で呟いていました。

 

おおよそ9年、そんな風にツイッターを使い続けてきた自分がまったく知らない、そして自分の周りには存在しない世界が『仮想人生』で描かれていました。

 

これは良いとか悪いとかではなく、それだけの多様性を持つインターネットのほんの一側面しか、『仮想人生』では描かれていないということです。

 

これがいわゆる「裏アカウント」のすべてだと思ってほしくはないし、かといって、こういった世界が存在していることもまた確かで。

 

自分の中では良作、に今一歩届かないくらいの良作という感じでした。

 

インターネット、というものについて

 

ここからは自論になってしまいますが、インターネットという今までにない概念の世界において、「自分を晒す」ということについて、インターネットを使うすべての人が今一度考え直してみるべきだと思います。

 

名前、顔写真、住所、近所の写真、どこで何をしたか、プライベートに関わるすべてのもの。

 

それらを公開することは、指名手配されるよりも早く、広く、知らない誰かにその情報が行き渡ってしまうことに他ならない。

 

その知らない誰かに悪意がなければスルーされるだけで済みますが、ほんの少しの悪意(あるいは正義)があれば、糸をたぐるように他人の人生にたどり着き、破壊することができる。

 

ユカがDMを送り、出会ったのが鉄平ではなく、レイプを目論む人だったら。

鉄平がネットでナンパし、セックスした相手の誰かが鉄平の個人情報を盗んでいたら。

裕二なんかは、パクっていた元ツイートの人たちに一斉に訴えられていたらおそらく勝てません。

 

そういう「他人の人生を壊すことができる道具」を使っている自覚を持たない人が多すぎるように思います。

 

自分の持っているものがままごとの包丁なのか、実物の包丁なのかもわかっていないのと同じような。

 

『仮想人生』を読んで、自覚のなかった人はそんな可能性にまで気づいてほしいと切に願います。

 

それではまた。

 

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