【マンガ感想】人形の国 1巻

 二瓶勉氏が贈る、極寒のダーク・アドベンチャー・ファンタジー
 二瓶勉氏の世界観には映画版『BLAME!』で初めて触れてのめりこんだのですが、シドニアはまだ未履修です。
 最新作の『人形の国』から、じっくり遡っていきます。
 

・1話

 1巻のほぼ半分を占める第1話。ほんの一瞬の、人工天体アポシムズの地表に暮らす人々の日常。
 この広く白く、しかし密度ある空間表現は二瓶作品の特徴ですね。BLAMEは黒々とした奈落のような密度ですが、人形の国は寒々とした広大な空気の密度とでも表現すればよいのでしょうか。
 読者になんの説明もなく飛び込んでくる専門用語(しかし作中人物たちにとっては当たり前の言葉)の嵐。これをキャラクターたちのやりとりから推測していくのも自分は大好きです。
 パイプの実、サビ喰い、遺跡層、人形病。始まってほんの数ページだけで、これだけの固有名詞が出てきます。
 
 そして次から次へと出てくるキャラクターたちの顔と名前がやっと一致してきたところで、物語は急降下。エスロー以外の「白菱の梁」の人々は、300年以上を生き、白菱の梁を守り続けてきた人形ゼゾを残して、リベドア帝国に容赦なく殺されてしまいます。
 それは白菱の梁を襲った残虐な帝国の正規人形、イーユを倒そうとしたエスローも例外ではなく。腕を千切られ、目を貫かれ、死の迫るエスローに語りかけるのは小さな自動機械タイターニア。エスローに人形への転換をすすめ、不完全ながらも正規人形への転換を果たしたエスローは、命からがらイーユの手から逃れるのでした……。
 
 なんという王道。しかし王道の始まりゆえに、これから物語はどう展開していくのかわくわくするところです。
 ヒロイン・タイターニアは、人型はヒロイン然としたかわいい女の子ですが、普段は四足のちっちゃな機械です。それすらも愛おしくなってくるというか、二瓶ヒロインはどうも人外性癖を目覚めさせてくる傾向にありますね。はたしてシボをヒロインと呼んでよいものか、非常に自分的には悩みどころなのですが。(どっちかっていうと相棒のほうがしっくりきます)
 
 

・2話

 イーユの魔の手からかろうじて逃れ倒れたエスロー。目覚めたときには90日、約3ヶ月が経過していました。
 エスローは仇のイーユを追おうとしますが、回復が十分でない。大好物の肉すら吐き戻してしまう状態のため、回復を待つ間にタイターニアから様々な説明を受けます。
 
 怒涛の1話から一転して説明回です。アポシムズの構造から、帝国の目的、エスローの得た能力、タイターニアが狙われる一因たる弾丸AMBなどなど。彼女の説明以外にも、さりげないコマの中でタイターニアは「折りたたみ式自動機械」であり、人型になれるのは時間が限られていること。肉を焼いたり(バーナーのようなものを内蔵しているようです)、食物を処理して消化しやすい形にできるなどの便利機能が備わっていることなどが示唆されています。
 あの小さい身体でエスローと同じサイズの肉を食べているワンシーンからは、今後のタイターニアの大食いキャラが既にチラ見せされていますね。
 正規人形はエナと呼ばれるエネルギーで人間らしい外観を含め、服を作ったりすることもしれっと描写されています。説明が押しつけがましくなく、物語の流れに沿った丁寧な読者への説明描写ではないでしょうか。
 
 死にきることもできず、残骸となっていたゼゾを眠らせたエスロー。白菱の梁を離れ、エスローとタイターニア、ふたりの旅がやっと始まります。
 
 

・3話

 旅路の途中、エスローとタイターニアがたどり着いた集落ではリベドア帝国が幅をきかせていました。人々は「破裂螺子」を埋め込まれて管理され、逆らう者には本人、あるいは近親者に死が待っています。
 そこでエスローは上級転生者と呼ばれる正規人形エイチと戦うことに。
 
 初めての敵が主人公より遥かに強いのはやはりアクション漫画では王道展開ですね。
 しかしどちらかというと見どころとしては、帝国側の上級転生者(正規人形)たちの会話だと思います。
 帝国も一枚岩ではないこと、フューマのような正義を思って帝国についている者もいる、というのは大きな情報です。まあ、エスローには知ったこっちゃない話でもあるのですが。
 
 エイチを倒して容量拡張し、ほんの少し強くなったエスロー。破裂螺子を外す鍵も手に入れたことで、集落の人々も解放されます。貴重なAMBを使ってしまったものの、エスローとタイターニアは距離を縮めたのでした……。
 
 
 1巻はとにかくストーリー仕立て自体は王道に次ぐ王道で、とにかく専門用語がズラズラ並ぶこのアポシムズに読者を引き込むことに苦心している節があります。この世界観にハマりこめるかが、『人形の国』という作品を楽しむうえで重要になってくるでしょう。
 ちなみに自分はこんな感じで感想書くくらいにはめっちゃ大好きです。
 
 2巻に続きます……。

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